日本山岳会が「登山活動の分野と山岳に関する文化的活動および学術的業績の分野において顕著な活動もしくは業績のあった個人またはグループ」に毎年授与している「秩父宮記念山岳賞」を原山智特任教授が受賞しました。
原山教授は、北アルプス中軸部「上高地」「槍ヶ岳」「立山」の地質図幅の作成、北アルプス形成に関する新たなモデルの提案による、山岳関係者への広い普及活動が称えられこの賞を授与されました。
北アルプスの水平軸回転を伴う隆起のモデル断面300万年前、海洋プレートの前進により日本列島に出現した東西圧縮力は、東から西へと上部地殻の変形の場を移動させてきた。北アルプスでの変形は140-60万年前、マグマ溜まりの存在のために剛性の低下した場所で生じ、逆断層に沿った衝上運動による南北水平軸回転を引き起こした。この隆起運動は地表にあったカルデラ火山の火山岩層を20°から80°東に傾斜させている。このように山脈内部での隆起運動の実態を明らかにしたのは、北アルプス地域で初めての成果である。


北穂高岳からみた穂高カルデラの傾斜した火山岩層 北穂高岳から大キレット越しに望む南岳獅子鼻のカルデラ火山岩層。176万年前の大噴火で堆積した火山灰層は、その後生じた隆起運動により、水平から東に20°傾斜する構造を示している。

直立した傾斜を示す白沢のコル凝灰岩層。爺ヶ岳の南峰と中央峰の間にある白沢のコルでは、カルデラ湖に堆積した水平な火山岩層が東に80°の急傾斜構造を示す。カルデラ噴火が生じたのは160万年前のこと。それ以降に生じた隆起運動により、爺ヶ岳一帯では東西6kmにわたって露出する火山岩層もほぼ垂直な構造を示すことが判明した。これもまた黒部川に沿って生じた逆断層による衝上運動で地表にあったカルデラ火山岩層が南北水平軸回転を起こした結果である。

秩父宮記念山岳賞受賞記念講演
「北アルプス(飛騨山脈)の形成」?マグマとプレート運動の共演による山脈の形成?.pdf
原山 智